「東北における加速器プロジェクトの紹介」

*** 岡部理事よりの情報です ***
東北における、加速器プロジェクトのご紹介です。

~加速器技術をエンジンに「稼ぐ力」を高める~
国立大学法人東北大学・国立大学法人岩手大学 客員教授:吉岡正和
1.東北における加速器プロジェクトの展開と加速器技術の集積
東北地域では東北放射光施設(SLiT-J)や国際リニアコライダー(ILC)といった2大プロジェクトの誘致に大きな期待が集まっており、実現に向けて学会、経済界、自治体はじめ各方面が一致協力しています。
一方、福島県郡山市の総合南東北病院では、がん治療装置の陽子シンクロトロンやサイクロトロンベースの中性子捕捉療法(BNCT)施設が稼働している他、青森県では国際熱核融合研究の一環である強力な重陽子リニアックIFMIF/EVEDAや、山形大学ではがん治療施設である重粒子シンクロトロンがそれぞれ建設中です。
これらが全て実現すれば東北は加速器プロジェクトの国際的なセンターとなり、加速器技術が集積する条件を満たすことになります。

2.東経連BCのコーディネーターチームの活動紹介
東北には自動車、半導体、宇宙航空機、ヘルスケア、精密機械など他分野にわたる多くの企業が立地しており、それを支える中堅・中小企業も多くあります。これらの企業は卓越した要素技術を有しており、ハイテク技術の集積体ともいえる高度な加速器プロジェクトを東北地域で実現するにあたって、その技術力を発揮できることは明白といえます。しかしながら、例えば自動車産業に比べて加速器産業は、一般的にな馴染みの薄い存在と言わざるを得ない状況です。
そこで、東北の企業と加速器産業との橋渡しをするために生まれたのが、東経連BCコーディネーターチームです。東北6県および新潟県に各数名ずつの専門家集団を組織し、高エネルギー加速器研究機構(KEK:茨城県つくば市)などアカデミー側の協力も得ながら、定期的な議論やセミナー、企業に対する助言を行うとともに、「バーチャル共同受注体」と称する緩やかなアライアンスを形成しています。(現在約110事業体が参加)。

3.グループ化から超伝導加速器技術イノベーションのメッカ東北へ
現在、東経連BCのコーディネーターチームでは次のステップに向かおうとしています。上記の加速器技術を核としたアライアンスの中から、例えば「超伝導加速空洞の電界研磨」であるとか、「永久磁石を起磁力とした加速器磁石」など、技術目標を明確にするとともに、新技術の開発も目指して1社~数社の企業スラスターを編成することとしています。
既に、クラスター化に向けた種は20程度あり、急速に組織化を進めています。欧州・アジアのいくつかの企業は既に我が国にブランチを設置して、加速器関連ビジネスを展開し始めています。地元企業が安閑とできる状況ではありません。迅速な意思決定と行動で具体的な結果を出していかねばならないのです。

●国際リニアコライダー(ILC : International Linear Collider)
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/seisaku/miyagi-ilc.html