「東大と超越化研、高い耐水性と適度な強度を紙に付与するコーティング技術を開発」
日本経済新聞プレスリリースよりお知らせいたします。
(2020年12月18日発表)
「超越コーティング – 紙をプラスチックの代わりに使う」
発表者は、以下3名
岩宮 陽子(株式会社超越化研 代表取締役)
柴山 充弘(東京大学 名誉教授)
廣井 善二(東京大学物性研究所 教授)
発表のポイントは
- 高い耐水性と適度な強度を紙に付与する新規なコーティング技術を開発した。
- 従来のゾルゲル法では困難であった紙素材へのシリカコーティングを安価で簡便な方法により実現した。
- この超越コーティングを施した紙はプラスチックのように使え、廃棄後に環境負荷を与えないため、海洋汚染などのプラスチックゴミ問題解決に寄与することが期待される。
発表概要
株式会社超越化研代表取締役の岩宮陽子、高エネルギー加速器研究機構名誉教授の川合將義、東京大学名誉教授の柴山充弘、東京大学物性研究所技術専門職員の浜根大輔、同教授の廣井善二は、高い耐水性と適度な強度を付与する、安価で簡便なシリカコーティング「超越コーティング」技術の開発に成功した。本コーティングを施した紙素材や紙製品は、多くの用途に利用されているプラスチック容器のように使用することが可能となる。
海洋汚染などを引き起こす多量のプラスチックゴミの削減は、持続可能な社会を実現する上で大きな課題となっている。プラスチックの使用を抑制するための材料開発が望まれているが、プラスチックの優れた材料特性と化石燃料を原料とする安価さから、これを置き換えることは容易ではない。
超越コーティング材料は、ヒトを含む生体に有害な物質を含まず、廃棄後も環境中で自然に分解するため環境に負荷を与えない。本コーティング技術によりプラスチック容器を紙容器に置き換えることが可能となり、プラスチックゴミ問題の解決に寄与することが期待される。
超越コーティング紙は生活素材から工業用途、焼却可能なマルチシートなどの農業分野、廃棄可能なシャーレなどの医療分野を含むさまざまな分野に有用である。また、本コーティング技術は紙だけでなく、繊維や木材などのさまざまな基材にも適用可能であるため、極めて広い応用範囲が期待される。さらに、本コーティング層には多くのナノ空隙が含まれるため、そこに触媒や化学物質を添加することができ、基材の特性を損なわずに用途に応じてさまざまな機能性を付加することも可能である。
本成果は、米国化学会のIndustrial & Engineering Chemistry Research誌の12月21日オンライン版に掲載される。
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