SPring-8-IIの紹介

岡部理事からの情報です。

SPring-8-IIの紹介

SPring-8とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。SPring-8では、この放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来しています。

SPring-8は国内外の産学官の研究者等に開かれた共同利用施設であり、平成9年より放射光を大学、公的研究機関や企業等のユーザーに提供しています。課題申請などの手続きを行い、採択されれば、誰でも利用することができます。SPring-8の運営は施設者である 国立研究開発法人理化学研究所(理研) が行い、SPring-8の利用者選定業務及び利用者支援業務(利用促進業務)を 公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI) が行っています。

大型放射光施設「SPring-8」は1991年から建設が始まり、光源の心臓部を担う加速器システムは運転開始から30年近くが経過しています。そのため、老朽化が甚だしく、安定した信頼性の高い運転の継続が難しい状況です。加えて、同様の海外放射光施設の更新が先行して進められ、SPring-8の光源としての国際競争力の維持が困難な状況にもなっています。よって、早期にSPring-8放射光施設の大規模改修に着手する必要がありました。

この大規模改修では、2050年までのカーボンニュートラルの達成に向け、社会・生産基盤の グリーン化 [2] の加速が求められる中、光源性能の飛躍的な向上と同時に、どのように要素機器の小型化(省資源化・ カーボンフットプリント(CFP) の削減)と使用電力の削減(省エネルギー化・高効率化)を達成していくかが課題とされていました。
SPring-8-Ⅱの大規模改修は、既に稼働している放射光源の大改修であることから、(i)既存のリングトンネルの再利用、(ii)全ての挿入光源ビームラインの光軸の維持、(iii)現在の利用可能なスペクトル領域の維持、(iv)運転停止期間の最小化(1年程度)という制約が課せられます。これらの制約の中で、性能の大幅な向上、老朽化対策と電力削減を実現するため、SPring-8とSACLAの高度化とユーザー運転の経験で得た知識を基に、以下のようなシステム構成を立案しました。

性能の大幅な向上は、SPring-8の主要ターゲットが硬X線領域であることを考慮し、電子ビームエミッタンスが50~110pm.rad(pm:ピコ(1兆分の1)メートル、rad:ラジアン
は角度の単位)の範囲で調整可能な設計としました。エミッタンスの調整は、長直線部に設置する ダンピングウィグラー(DW) [12] により行います。この設計コンセプトにより、SACLAからの高品質入射ビームを利用した オフアクシスビーム入射 [13] が可能なリングの安定領域が確保でき、標準 アンジュレータ [14] において約2桁の輝度増大( 図1 )を達成できます。

図1 SPring-8とSPring-8-Ⅱのアンジュレータ放射の輝度の比較
SPring-8-Ⅱの標準アンジュレータの輝度は、SPring-8よりも2桁ほど高くなると見込まれる。pm:ピコ(1兆分の1)メートル、nm:ナノ(10億分の1)メートル。rad:角度の単位。

図2 SACLAの線型加速器のリングビーム入射器としての時間分割利用

リング専用の入射器などを運用停止し、ビーム入射器の役割を新しいSACLAの線型加速器に担わせる。 線型加速器の時間分割利用により、SACLAの運転電力を増やことなくリングへビームを入射できる。蓄積リングは一新されますが、リング専用の入射器とその特高変電所(大電力を効率よく送電するための高電圧を、通常の機器が使用可能な低電圧レベルに変換する設備)の老朽化対策が課題として残ります。この更新には、巨額の費用がかかり、簡単に性能向上が見込めないため、それらを更新するのではなく、全てをシャットダウンし、ビーム入射器の役割を、併設する新しいSACLAの線型加速器に担わせるスキーム(図2)を考えました。これは老朽化対策のコストを削減するだけでなく、施設の電力消費削減にもつながります。SACLAの運転電力を増やさずに、リングへビームを入射させるスキームを実現するため、線型加速器を時間分割で利用できるように2016年から必要な開発と整備を進めました。この結果、2021年4月から、SPring-8-Ⅱに先行する形でSACLA線型加速器からの現SPring-8へのビーム入射をユーザー運転に導入し、同年8月にリング専用の入射器とその特高変電所をシャットダウンすることができました注1)。完成したシステムは、SPring-8-Ⅱのビーム入射を担います。

電力削減、省資源化に関しては、下記三つの省電力化を組み合わせることで、SPring-8-Ⅱ以降の消費電力量を2021年3月までと比べて半減できる見込みです(図3)。
(i)蓄積ビームエネルギーを8から6ギガ電子ボルト(GeV、1GeVは10億電子ボルト)に下げる一方、アンジュレータの周期長を短く(例えば標準型で32mmを22mm)して短波長のスペクトル領域を維持する。
(ii)全ての偏向電磁石を永久磁石に置き換える。
(iii)リングの専用入射器をシャットダウンして、SACLAの線型加速器をリングの入射器として時間分割使用する。

図3 SPring-8のグリーン大改修による電力削減効果
蓄積ビームエネルギーを下げたり、偏向磁石を電磁石型から永久磁石型に変換したりするなどして、大改修したSPring-8-Ⅱは、性能が飛躍的に向上する一方で、消費電力量が半減する見込み。

【今後の期待】

 

2027年度から現SPring-8を停止し、加速器の大改修を行うことを目指し、2025年度からその計画(SPring-8-Ⅱ)をスタートさせるためのさまざまな協議・準備が行われています。SPring-8には、光源高度化の長年の積み上げとSACLAの高度化、ならびに運転の経験が施設に蓄積されています。リング光源の性能が上がるにつれて、その運転は難度の高いものになりますが、XFELで培った経験と知識を十二分に活用しながら、高性能のSPring-8-Ⅱのフル活用を早期に実現し、他施設に先んじて、未踏のサイエンスを切り開くことが期待されます。

 

SPring-8-IIの紹介動画

https://new.spring8.or.jp/images/spring8/movie/SPring8-II-web.mp4

 

SPring-8(放射光)問い合わせ窓口

https://user.spring8.or.jp/?p=20774#2

 

SPring-8-II計画の概要

 

SPring-8の⾼度化(SPring-8-Ⅱ) 説明資料