エコマテリアル・フォーラム 会長 原田 幸明

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エコマテリアル・フォーラムは1992年のリオデジャネイロ環境サミットの直後の1993年、エコマテリアル研究会として発足しました。その第一代の会長は、東京大学の山本良一現名誉教授です。今から見ると考えられない話ですが、設立当時は「エコとは何か」「環境はビジネスになるの矛盾するのか」などが議論されていました。ちなみに、エコマテリアルの「エコ」は、環境を意味して使われる接頭詞の「エコ」ではなく、Environment ConsiousのEcoです。

 エコマテリアル研究会ができるまでは、材料開発はより良い性能をもとめる「フロンティア性」が主軸でしたが、研究会はそのなかに「環境調和性」「アメニティ性」を取り入れることが重要であるとして指摘し、それを「材料のエコマテリアル化」と呼んで進め、多くの企業や大学とともに科学技術振興調整費などの国家プロジェクトを推進してまいりました。

 またその中で、「エコ」の度合いを評価するとは何かという問題意識を提起し、いまカーボン・ニュートラル等で注目を集めているLCAの導入と普及を進めるとともに、現在は大きな世界的会議となっているエコバランス国際会議を準備したのも笑みマテリアル研究会です。また、国際会議と言えば、ほぼ二年に一回のペースでエコマテリアル国際会議を開催し、中国、ベトナム、タイ、インドなどのエコマテリアル研究開発の展開にも大きく貢献しています。

 エコマテリアル・フォーラムと名称を変更したのちも、エコマテリアルの研究開発を推し進めるとともに、2011年の東北大震災の折には、「罹災物選別所の設置」などの提言や放射能汚染に対する取り組みなども進めてきました。さらに、2020東京オリンピック・パラリンピックにおいては、その金銀銅メダルをみんなのリサイクル材料から作る「都市鉱山メダル」運動を展開し、それを実現しました。

 このような活動を進めてきたエコマテリアル・フォーラムですが、21世紀も中盤が見えてきた今、カーボン・ニュートラル、SDGs、サーキュラー・エコノミーと世の中の持続可能社会に向けた動きが急速に強まっています。「エコとは何か」を悩んでいた時代から、「エコをどのように実践かるか」が問われる時代になってきました。その中には、もはや「モノではなくコトだ」という声も強まっています。しかし、あらゆる実践のフィジカルな基盤を作り出し現実化するにはモノは欠かせません。持続可能時代に必要なモノとは何か、そのためのモノづくりと、モノの管理とは何か、エコマテリアル・フォーラムはそれを真正面から取り上げていきたいと思っています。

(2022年4月)

 

東北関東大震災・津波に起因した福島原発事故の基本的な理解のために

(2011年4月)

現在、東北関東大震災・津波に起因した福島原発の事故が起きており、多くの人たちが不安に事態を見守っています。 なかには原子力発電とは何なのか、放射能とは何なのか、何か起こっているのかなどよくわからないままニュースに接し不安におののいたり、何をしたらよいのか悩んでいる人たちも多く出てきています。 このような中で少なくとも適切な科学的知識を伝え、誤解からくる不安や判断の間違いを少なくしていくことは、科学技術にかかわる人間の社会的責務だと考えます。

そのような観点で、皆様が、身近なかたがたに放射能とはなにか、原発事故とはどのようなものかを説明し、周りの人たちにより適切な科学情報を与えるための資料を作成してみました。

わかりやすさに主眼を置いたため、特に確率的考え方の部分など正確さを犠牲にしている部分もありますので、できましたら配布するのではなく、紙芝居のように説明してあげるときの資料として使っていただければ幸いです。

ことの緊急さにかんがみ急ぎ作成したため いろいろな不十分点もあると思いますので、修正の必要など皆様のご意見もいただけると幸いです。

エコマテリアルフォーラム会長 原田 幸明