エコマテリアルのトピックス

「エコマテリアル」とひとことで言っても、その研究対象は、金属、動植物、社会システム・・・と多岐にわたります。

当フォーラムは各分野で活躍している会員の皆様が、分野を越えた横断的な情報交換や交流ができることをめざしています。

その試みの一環として、トピックスのページでは、「エコマテリアル」に関連する最新情報や興味深い話題を、各方面のスペシャリストがお知らせします。

みなさまからの話題提供も募集していますので、とっておきの話題、情報がありましたら、ぜひ、ご寄稿下さい。

「すごい自然のショールーム開館」

自然の仕組みを低環境負荷技術のヒントに。
 ネイチャーテック研究会は、人間のテクノロジーに応用できる可能性を秘めた自然の「すごさ」を集めたWEBページ「すごい自然のショールーム」を開設しました。 人間の生活をよりよく変える可能性のある自然や生き物の「ふしぎ」や「すごさ」を楽しく紹介することで、子供から大人まで、 自然に興味を持ってもらうことを狙いとしています。従来の自然模倣技術のコレクションだけでなくオリジナリティの高いトピックも多く、研究のヒントにもなりそうです。 データの数やより詳細な研究情報は今後もどんどん追加される予定で、一般向けとしてだけではなく、 研究者の情報集めや分野横断的な交流にも役立つよう発展することが期待されます。
〔文責〕垣澤英樹  (独)物質・材料研究機構 コーティング&複合材料センター

研究室紹介2

「(株)神戸製鋼所 機械研究所 化学環境研究室のご紹介」
 神戸製鋼所は、鉄のほかアルミ銅、機械の事業部門を持っており、さらに特長ある製品を生み出す関連会社も数多く存在します。 私達は、神戸製鋼グループの化学分野の技術を支える専門集団として、機能性素材、プロセス工学、環境浄化に資する技術開発に取り組んでいます。

 連絡先: ㈱神戸製鋼所 機械研究所 化学環境研究室
       〒651-2271  神戸市西区高塚台 1丁目5-5
       Tel: 078-992-5635   Fax: 078-992-5547
       URL: http://www.kobelco.co.jp
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「新刊『環境適合設計ツールの活用入門』のご案内」

製品設計に環境配慮性を如何に取り込むか?
そのための具体的方法が本になりました。

新刊 『環境適合設計ツールの活用入門』
―コアツールLCA,QFDE,TRIZの活用― のご案内

 日科技連出版社より、2006年1月に表記の書籍が刊行されました。エコマテリアルの研究・開発・普及に携わっている皆様方には、 マテリアルからエンドユーザに一段と近づいた製品レベルでの設計に環境配慮性を取り込む手法をご紹介するものです。
【本書の使い方】
・製造業社内での環境適合設計の研修テキスト・実務用手引きに
・大学・大学院での環境適合設計の講義用テキストに
・エコマテリアルの効果的な製品への利用の手掛かりに
【本書の対象読者】
(a) 製造業の実務者:日々の実践に有効
(b) EMS(環境管理システム)の実務者:製品のライフサイクルの管理への橋渡しに有効
(c) 学生:環境適合設計の基礎習得から研究の参考に有効
【本書の特徴】
(1) 実践的:「環境適合設計=従来の設計に対して”環境配慮”という新たなトレードオフの要素が加わった設計」を従来の設計と対比して実践的に詳説
(2) 具体的:概念だけでなく、LCA・QFDE・TRIZという3つのツールを順に利用することで、効果的な設計が行えるよう具体的に作業手順を詳説
(3) 適用事例付き:3つの異なる製品に適用した事例を詳説
ご興味のある方は
日科技連出版社HP →「2006年度刊行図書」→「1月」→「環境適合設計ツールの活用入門」→「詳細」

または、書店にてお尋ね下さい:
坂尾知彦, 増井慶次郎, 笠井肇 著:環境適合設計ツール活用入門-コアツールLCA, QFDE, TRIZの効果的活用方法とその事例, 173 pages, 坂尾知彦 編, 日科技連出版社, 2006, ISBN4-8171-9174-0
〔文責〕坂尾 知彦  ドイツ・ダルムシュタット工科大学 ゲストリサーチャ

「NIMSイブニングセミナーを開催します」

自然(昆虫や土など)から学んだエコマテリアルの発想を生かす。
 3月17日、物質・材料研究機構は、東京・虎ノ門でNIMSイブニングセミナー(10)を開催します。 今回のテーマは「自然(昆虫や土など)から学んだエコマテリアルの発想を生かす」です。
自然界に存在する材料の素晴らしさを解き明かし真似ることは、古くからモノづくりのよきお手本となってきました。 天然材料や生物にヒントを得た新しいエコマテリアル技術「ネイチャーインスパイヤードマテリアル」について、NIMSエコマテセンターの研究者が紹介します。
聴講費無料です。

日時 H18年3月17日(金) 16:00-18:00
(終了後、会費制で懇親会を開催予定。会費:1,000円) 18:00~19:00
〔文責〕垣澤英樹  物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター

「バイオポリエステル熱安定性の鍵」

生分解性プラスチックの熱安定性、本当は高い?
 再生可能資源から合成されるバイオポリエステルは、代表的な生分解性プラスチックですが、熱安定性が低く、熱成型時に起こる熱分解が問題となっていました。 しかし最近になって、バイオポリエステル自身の熱安定性は低くないことが分かってきました。再生可能資源を原料として化学重合で生産されるポリ乳酸の場合、 ポリマー中に残存する重合触媒由来の金属イオンが熱安定性を著しく低下させているということが報告されていますが、さらに、驚くべきことに微生物合成されるポリ (3-ヒドロキシブタン酸)においても、ポリマー中には細胞由来のカルシウムイオンなどが含まれており、それが低い熱安定性の原因であることが分かってきました。 これらの金属イオンは、ポリマーの酸処理あるいはポリマー鎖末端を化学修飾すると大部分を取り除くことができ、ポリマーの熱安定性も非常に向上するということです。
〔文責〕山下宏一  理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム

[参考文献]
Polym. Degrad. Stab., 91, 769 (2006).
Biomacromolecules, 5, 1480 (2004).
Biomacromolecules, 5, 1606 (2004).
Polym. Degrad. Stab., 81, 515 (2003).

「物材機構が『物質・材料研究アウトルック』を刊行」

国内外の物質・材料研究、政策、施策の動向を分析
 物質・材料研究機構(NIMS) は、国内外の物質・材料に関わる政策、施策、研究活動等の全般的動向を分析した情報分析誌「物質・材料研究アウトルック」2005年版を刊行しました。
「アウトルック」は、国内外の物質・材料研究に関係する政策担当者、研究機関の運営管理者、研究者等を対象とし、 活動方針策定のための分析情報として活用されることを目的としています。物質・材料の主要分野について、最近の研究動向や将来の見通しがまとめられているほか、 日米欧を中心とした各国の物質・材料に関わる研究政策や研究機関の調査・分析も行っています。

〔文責〕垣澤英樹  物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター

「『愛・地球博』、その後」

愛知万博で推進されたバイオリサイクルやマテリアルリサイクルの成果が開示されています。
 愛知万博では、環境に配慮したバイオリサイクルやマテリアルリサイクルが推進されました。 万博終了後も、12月号のメルマガで一部紹介したような試みが継続的に実施されています。 経済産業省から「バイオプロセス実用化開発事業」を受託してこれらの事業を推進している(財)バイオインダストリー協会では、 その成果を下記のホームページで開示しています。
〔文責〕山下宏一  理化学研究所 中央研究所 化学分析チーム

「ジャニン・ベニュス『Biomimicry』の翻訳書がオーム社から刊行」

「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」2月から店頭に
 1997年ジャニン・ベニュスが著し話題を呼んだ「Biomimicry」の日本語版が刊行されました。 自然に学び生体に似た機能を応用することにより持続可能な社会を形成することを提案し、その先進的な事例を紹介しています。 遅すぎた感すらある日本語版の出版ですが、その考え方は10年たっても色あせず、むしろますます重要になっています。 環境負荷低減に関わる技術開発に取り組む方にとって大いに興味の持てる一冊だと思います。

ご興味のある方は、こちらまで→ http://ssl.ohmsha.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=4-274-50065-9〔文責〕垣澤英樹  物質・材料研究機構 エコマテリアル研究センター

JST研究プロジェクト「都市・地域構造に適合した資源循環型社会システムの構築」の終了

成果内容およびワークショップ等の資料概要の一部を
未踏協会ホームページに公開しました。

平成14年4月に(社)未踏科学技術協会内に設置いたしました「循環型材料技術委員会」では、皆様のご支援のもと、平成14年11月より平成17年10月の3年間にわたり、 (独)科学技術振興機構社会技術研究開発センターの公募型プログラム研究領域Ⅱ:循環型社会において、 研究プロジェクト「都市・地域構造に適合した資源循環型社会システムの構築」を実施いたしました。研究成果の公開につきましては、 (独)科学技術振興機構社会技術研究開発センターにおいてなされますが、研究チームにて取りまとめた成果内容およびワークショップ等の資料概要をホームページに公開しました。 今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

〔文責〕梅澤 修  横浜国立大学大学院 工学研究院 システムの創生部門

研究室紹介 1

独立行政法人理化学研究所 環境ソフトマテリアル研究ユニットのご紹介
独立行政法人 理化学研究所 環境ソフトマテリアル研究ユニット
〒351-0198 和光市広沢2-1 (独)理化学研究所 電話:048-467-7963 Fax:048-462-4668
ユニットリーダー 丑田 公規
研究室URL :
http://www.riken.jp/lab-www/eco-soft/
http://www.riken.jp/r-world/research/lab/unit/eco-soft/index.html (Japanese)
http://www.riken.jp/engn/r-world/research/lab/unit/eco-soft/index.html (English)
1.研究室名について
「環境ソフトマテリアル」という耳新しい名前について説明しなければなりません。実は英語にするとわかりやすく「エコマテリアル(Eco Material)」 「ソフトマテリアル(Soft Material)」という2語の合成であることがわかります。所内では研究室名はできるだけ日本語にするという要請があって、 環境省からいただいた予算でプロジェクト研究を進めていることもあって「環境」という日本語を使うことになりました。
ソフトマテリアルあるいはソフトマターという言葉は、物性物理学で最近よく使われている言葉です。たとえば Physical Review E の指定する領域は、 “Statistical Nonlinear, and Soft Matter Physics”と書いてあります。 もともと、固体物理(Solid State Physics)に対する用語として「やわらかい物」という意味の用語が使われたのですが、高分子、液晶、ガラス、膜、ゲル、生体物質、 生物そのもの、といった、不定形の複雑系を総称してソフトマターと呼んでいます。こういった物質は「化学」の立場から語られることは多かったのですが、 「物性物理学」「化学物理学」といった物理学の見地で、複雑系を考え直そうという機運が高まってきたのです。 環境保全や廃棄物処理を考えるサイエンスやエンジニアリングを進める上で、物性物理学の見地からの知見や考察が大変重要になります。 その中で、私たちの身の回りにある物の多くが「ソフトマテリアル」であることに気づきました。 「ソフトマテリアルならではの物性や反応性」を利用して環境保全や廃棄物処理に役立てるということができないものだろうか、と考えたわけです。 ソフトマテリアル物理を駆使して環境改善の方法を発見しようという考え方です。
ユニットという研究単位は、プロジェクト予算が進行しているだけの間認められる研究単位で、いわば「期限付き研究室」です。 予算がなくなれば私は普通の研究員に戻ります。理研では流動的かつ効果的に研究を進めるためにこのような制度を持っています。

2.廃棄プラスティックの脱塩素処理の必要性
現在、生産量の3/4を占める主要プラスティックには、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)の4つがありますが、 このうちPVCのみが塩素を含んでいます、元来プラスティックはどのプラスティックでも可塑剤、安定剤、増量剤、色素というような添加物が大量に含まれており、 それを調整することによりプラスティックの素晴らしい特性を引き出しています。例えばPVCの場合、水道管などに用いられている硬質塩ビ、 電線被覆などに用いられている白色配合塩ビ、自動車のシートなどに用いられている軟質塩ビでそれぞれPVCの含有量が違います。 硬質塩ビでは90%以上PVCですが、白色配合では約半分、軟質塩ビでは約1/3しかPVCが含まれていません。他のプラスティックでも似たような事情です。 ですから、それをもう一度集めて作り直しても、もとのプラスティックと同じ成分を再調製することは困難です。 ですから、もっとも理想的なプラスティックのマテリアルリサイクル(プラスティックとしてのリユーズ)は、大きな技術的困難が伴うとともに、 コスト的に全く見合うものではありません。つまり、企業ゴミのようにある程度分別されたプラスティックが集積するならば処理はより簡単ですが、 ご承知のように分別技術にはまだまだコストのかかる物が多く、複雑な廃棄物を扱うには万能ではありません。
一方、プラスティックゴミの焼却による熱利用、すなわちサーマルリサイクルは現在のところ法的に許可されていません。 そこで、マテリアルリサイクルの次善の策としてケミカルリサイクル(またはフィードストックリサイクル)が試みられています。 バルク量として、もっとも大きな事業は鉄鋼業界で石炭の代用として、コークスの原料になるか、直接高炉に吹き込み還元剤として用いられているものです。 これは間接的に炭酸ガス排出の削減につながる重要な技術です。

さて、主要プラスティックのそのまた1/4を占めるPVCにしか含まれていない塩素は、加熱すると塩化水素(塩酸)として放出されます。 高炉による利用にしても、サーマルリサイクルにしても、加熱処理をする場合にはプラントへのダメージはさけられません。 そこであらかじめ塩素をプラスティックから除去する必要があります。目安は自然の石炭にも含まれている塩素の0.5%程度以下に下げることです。

このような処理方法として、JFE(旧日本鋼管)のロータリキルンを用いた輻射加熱方法と、2軸射出機を用いた摩擦加熱方法が存在しています。 前者は特にPVC含有量の多い廃プラ、後者はPVCの少ない廃プラで特に効果的であるとされています。 それらはいずれも窒素雰囲気で加熱することが特徴ですが、それぞれ原理的にある程度PVC(塩素)含有量を調整しなければならないことと、 加熱時間が平均30分以上かかることが技術的問題点でした。

3.誘電加熱を用いた混合廃プラの脱塩素処理
ソフトマテリアルならではの物性を使った廃棄物処理方法として、今現在我々は以下のような研究を進めています。
主要廃プラの中でPVCのみが誘電感受性が強いことは、キュアリングの現場ではよく知られていました。ただし、このデータは数100MHZの周波数領域の話です。 そこで、我々は、混合廃プラでも1GHz以上のマイクロ波による誘電加熱でPVCのみ選択的に加熱できるのではないかと考えました。この原理を図1に示します。

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図1
マイクロ波で選択的にPVCが脱塩素化されるメカニズム

この方法だと原理的に、どんな量のPVCが含まれていても、その部分だけが加熱されますから効率的な脱塩素ができるはずです。 吸収マイクロ波エネルギーは体積に比例しますが、熱の逃散は表面積に比例するので、実際はあまり小さなPVCの断片はあまり効率よく加熱できません。 しかし、含有量そのものには依存しませんから、一般廃プラのように毎回PVC含有量が変動する廃棄物の処理にはうってつけです。 つまり選別されていない廃プラをそのまま処理できることが最大のメリットです。
この方法での試験については(株)神戸製鋼所機械研究所化学環境研究室との共同研究を2000年から続けており、神鋼が主体となって、 (社)プラスティック処理促進協会、文部科学省の 平成14年度独創的革新技術開発提案公募(産学官連携イノベーション研究)制度 の補助をいただいて研究を推進してきました。写真1は、写真2の神鋼の試験装置でPEの中にPVCの入ったモデル廃プラを処理した例で、 予想通りにPVCのみが炭化して処理されているのがわかり、この手法は一応の成功をすることがわかりました。特にうまくいく場合には1-2分で処理できる模様で、 処理速度が速いことが特徴です。この手法は日本経済新聞(2003/7/25)、化学工業日報(2003/11/4)、朝日新聞(2003/12/6)、Chemical Engineering誌(2003/9)、 日刊工業新聞(2003/11/13)などで紹介されました。clip_image002
写真1
処理前後のPVCとPEの混合物。処理前の混合物(右側が)処理後にPVCのみが黒化しているのがわかる
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写真2
マイクロ波処理装置の製作例((株)神戸製作所)
この手法については「電子レンジ」をイメージされることと思います。しかし、電子レンジはものを「マイルドに暖める」装置で、急速加熱する装置ではありません。 実際我々の研究では強い電界強度での加熱が必要であることが判明しています。しかも処理速度が速いほうが有害物の再合成(ダイオキシン生成のリスクが高まる) の可能性も低いと言うことになります。そのためには高い電界強度(数kV/m以上)を発生させなければならないということもわかってきました。 そこで、マイクロ波を印加する装置(アプリケータ)の設計を根本からやり直す必要があることがわかりました。

現在第3のフェーズとして、平成16年度から環境省の 廃棄物等処理科学研究費で3年のプロジェクト研究を進めています。この研究の概要を説明しましょう。
マイクロ波誘電加熱では、電界強度の分布設計が重要な鍵となります。この実態を実験的に調べる実験は難しいので、コンピュータによるシミュレーション解析が有効です。 誘電加熱の効率は材料の誘電率に依存します。その上、過去の実験では、熱の放散が重要なファクターになることがわかってきました。 そこでプラスティック材料の誘電率と熱物性(熱容量、熱伝導度、熱拡散率)を実際に各温度で測定し、データベース化し、これを理研の スーパーコンピュータ (Riken Super Combined Cluster : RSCC)System で計算、可視化するスキームを考えました。 この方法を用いると、多数のアプリケータを製造する手間や費用が省けます。プラスティックを処理するアプリケータに関する技術は、未開拓で蓄積がありませんから、 様々な設計のアプリケータをシミュレーションで検討するのがもっとも効率的なアプローチです。
「それは簡単だろう。熱物性も誘電率もすでに確立した測定だから。」とよく言われるのですが、これは大きな誤りです。 まずプラスティックはすべて混合物で個々の材料製品によって物性が大きく異なります。これではそれぞれの製品を各社から集めて自前で測定評価するしかありません。 ましてや100-200℃程度以上の加熱時の物性は公的に明らかにされたデータが存在しません。さらに、1GHz 以上の誘電率は測定が困難で今まで測定例がありませんでした。誘電率はkHz領域までは簡単に測定できます。これは、こういった周波数の電磁波の波長が十分に長く、 交流の電流として捕らえるのが容易だからです。しかし、例えば電子レンジに使われる2.45GHzのマイクロ波の波長は約10cm程度ですから、 より微細な測定電極が必要ですし、ケーブルなどからの電磁波の漏れを十分に小さくする必要があるので、精密微細加工した測定セルが必要です。我々は 北海道大学理学部野嵜助教授の研究室 の技術を提供して頂き、プラスティック材料の1-20GHz領域の誘電正接スペクトルを100℃程度までの温度領域で測定することができました。 現在は、さらに温度領域を高温側に広げていくためにケーブルやコネクタの材料を変更した精密測定セルを、理研の微細加工技術を使って製作しています。 現在熱測定とともに、各種エンジニアリングプラスティックやプラスティックシートなどのデータベース化に取り組んでいます。
一方、シミュレーションプログラムについては理研の 情報基盤センターの姫野室長の協力の下、電磁波解析と熱流解析を連結した連成解析のシミュレーションプログラムを開発中です。 この2つの解析とも有限要素法を用いたシミュレーションプログラムはすでに市販されています。しかし、 これらを連結したシミュレーションプログラムは存在していませんでした。誘電加熱の場合、 最初にプラスティック材料を入れたときの電磁波を解析すると電界強度が求まって、誘電加熱効率が計算できます。 しかし、その次の瞬間、温度が上昇し熱伝導が起きますから、誘電率や熱伝導度が変化します。ですから、その段階で、再び電界強度計算をし直さなければなりません。 電磁波のダイナミクスと熱伝導のダイナミクスは、時間領域が全く異なりますから、2つの独立したプログラムの連成解析をすることができます。 まだ途中の結果ですが図2にそれを示します。
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図2
誘電加熱シミュレーションの例:下のようなアプリケータ中央にPVCのシートをおいたときの過熱状況。マイクロ波定在波の腹の部分で温度上昇が激しい

本研究プロジェクトで目標にしているのは、
1)塩素含有量に左右されない脱塩素処理:どのような混合廃棄プラスティックでも、受け入れ時の成分調整なしに高効率で脱塩素処理できるような、アプリケータを設計する。
2)迅速な脱塩素処理:1-2分で処理を終了し、可塑剤系などで起こる副反応を抑制し、有害物の生成を最小限に抑える。
の2点です。こればかりでなく、最近電気炉でのプラスティック焼却が許可されるようになったことでもわかるように、閉鎖系で廃棄物が散乱しないと言う性質が、 結局は環境負荷を低減し、安全性の価値を高めるというメリットを生むと考えています。

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